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幽霊は彼女の夫の姿をしている。彼女が遅くに帰宅すると幽霊がソファに座ってテレビを観ている。値下がりしていたのをふたりで半日吟味して買った大きくて薄いテレビだ。幽霊はサッカーを観ている。彼女はただいまと言う。幽霊はおかえりと言う。彼女は着替えるために寝室に入り、そして夫がそこにいるはずのないことを思い出す。開けたままの扉から居間を振りかえる。幽霊はもういない。
あるいは休日の朝、彼女は目玉焼きを焼く。幽霊はお湯をわかしコーヒーフィルタの底を折りカップを取りだす。トースターが音をたて、彼女は何かに気づく。幽霊はもういない。トースターの中にはトーストが一枚だけ入っている。コーヒーはどこにもない。コーヒーフィルタもない。カップはひとつだけ出ている。彼女は自分がそれを戸棚から出したことを思い出す。目玉焼きはふたつあり、彼女はそれを持てあます。
あるいは、と私が尋ねると、並んで歯みがきしてたり、お風呂に入っているときに鍵の音がしてただいまと言ったりする、と彼女はこたえる。それが出るのは決まってまったくドラマティックでない場面であり、彼女が強い感情を感じていないときであり、そうして、状況の異常さに気づいたときには消えている。会話をすることはない。
” —幽霊を待つ - 傘をひらいて、空を (via ginzuna)